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 二酸化炭素などの温室効果ガスの温暖化が進行する地球。しかし、一方で、温暖化がきっかけで地球の寒冷化が進む可能性も指摘されています。この、一見奇妙な仮説を検証してみましょう。

海流が作り出す穏やかな気候

 地球は太陽からの放射熱の量によって赤道付近は暑く、極地方は寒くなっています。しかし、地球表面の七割を占める海は、海流によって赤道付近の熱を中・高緯度地方に運び、地球全体の気候を穏やかにしています。もし海流が止まると、赤道付近はより暑く高緯度地域はより寒いという極端な気候になるのです。

 高緯度地域を暖めている海流の代表が北大西洋を南から北に流れるメキシコ湾流です。熱帯から北緯70度にまで達する流れは、高緯度に位置するヨーロッパを温暖な気候に保っています。

 たとえば、日本の札幌(北緯43度)の年平均気温は9.0℃ですが、イギリスのロンドンはずっと北(北緯51度)に位置するにもかかわらず9.7℃です。

深層海流が熱を運ぶ

 このメキシコ湾流は北上しながら次第に温度を下げ、最後はグリーンランドなどから流れてきた海氷によって冷やされて重くなり、海底深く沈み込みます。また、凍結して海氷が作られる場合もあり、その際には塩分が吐き出されるので海水はさらに重くなります。

 こうして沈み込んだ海水は大西洋の深さ3千~4千メートルをゆっくりと(秒速10㎝以下)南へ移動する深層海流となります。この流れはインド洋と南太平洋に別れて北上します。その後はしだいに暖められて上昇し、インド洋北部と北太平洋で表層水になります。やがて向きを変えて南下し、アフリカの南端を回って再び大西洋に戻ります。

 この海洋大循環は一巡りするのに約2千年かかる壮大な流れで、熱帯地方の熱を高緯度地域に運び、地球の気候を穏やかなものにしているのです。

メキシコ湾流が停滞すると……

 この海洋大循環が近年弱まりつつあるのです。すでにメキシコ湾流の沈み込みが30%程度弱まっており、今後さらに停滞するという予測もあります。

 その原因は温暖化によるグリーンランドの氷河の融解です。それによって海表面に淡水が大量に流れ込み、塩分濃度が低下して軽くなるため、海水が沈み込みにくくなるのです。

 もしこれが進行すると、海洋大循環が停滞してメキシコ湾流が今ほど北にまで流れなくなり、特にヨーロッパが寒冷化するという予測があるのです。しかし、こんなことが本当に起こるのでしょうか?……実は、今から約1万3千年前に実際に起こっていたのです。

1万3千年前の大異変

 それは、約10万年続いた最後の氷河期が終わりつつあった約1万3千年前のことです。当時、大西洋では今と同じようにメキシコ湾流が高緯度地域にまで流れ込み、ヨーロッパに温暖な気候をもたらしました。

 ところがその後、わずか数十年の間にヨーロッパは急速に寒冷化したのです。それは、北米大陸で起こったある出来事がきっかけでした。

 当時、現在の五大湖の辺りには氷河が溶けて出来た日本列島ほどもある巨大な湖があり、まだ残っていた氷河によってせき止められていました。それが崩壊して膨大な量の淡水が一挙に北大西洋に流れ込み、海氷面の塩分が薄まったのです。
 
 こうして海水の沈み込みが止まり、メキシコ湾流も停滞しました。その結果、ヨーロッパは約千年にもわたって氷河期に逆戻りしました(注)。

 地球が温暖化し、グリーンランドの氷河が溶けつつある現在の状況は1万3千年前と似ているのです。

微妙なバランスに立つ現在の気候

 ただし、この仮説は不確実なもので、仮にメキシコ湾流の停滞が起こるとしてもいつどの程度起こるのかは分かりません。地球温暖化予測をしている「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告では、今世紀中に海洋大循環が停止する可能性は低いと見ています。

 また、循環が多少弱まったとしても、それによる寒冷化よりも温室効果ガスの増加による温暖化の方が上まわり、ヨーロッパの気温は上昇するとしています。

 最近、過去1万年の地球の気候は歴史的に見ても非常に安定したものであったことが分かってきました。その原因は海洋大循環が安定していたことによるものと考えられます。地球の気候は微妙なバランスの上に成り立っているのです。

 人間活動による温暖化はそれを突き崩し、不安定な気候をもたらす可能性があります。今後の地球の気候がどう変化するかは予測が困難ですが、温暖化は何としても防ぐ必要があるのです。 (平成19年11月13日記す)

注:ヤンガードリアス寒冷期と呼ばれている

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